時折忘れがちですが、植物や魚にはその特定の期間において最も栄養価が高く、美味しくなる「旬」が存在します。
この「旬」というのは、野菜や魚が自然のサイクルに従って成長し、収穫される最適な時期を指します。
今回、冬に旬を迎える野菜であるほうれん草に焦点を当ててみましょう。
ほうれん草は何科?
ほうれん草は、栄養価が非常に高く、緑黄色野菜の代表とされています。
一般的にはアブラナ科の一員と思われがちですが、実はヒユ科のホウレンソウ属に属する1年草または2年草です。
この科には、ほうれん草の他にもビーツ、甜菜、おかひじき、不断草(スイスチャード)などが含まれています。
ほうれん草の表記と由来
ほうれん草の漢字表記には「菠薐草」というものがあります。
ここでの「菠薐(ポーリン)」は、中国語で「ペルシャ」を指し、ほうれん草がペルシャからシルクロードを経て中国に伝わり、中国で「菠薐草」と呼ばれ、それが日本に伝わって「ポーリン」が「ほうれん」に変化し、ほうれん草と呼ばれるようになったと言われています。
なお、ほうれん草を表す漢字は他にも「鳳蓮草」や「法蓮草」といったものがあります。
ほうれん草の旬と産地
現在、ハウス栽培によって通年で入手可能ですが、ほうれん草の本来の旬は11月から1月にかけての晩秋から冬です。
この期間に収穫されるほうれん草は、寒さに耐えるために糖度が増し、甘味が増し、栄養価が高まり、見た目も鮮やかです。
季節によって変化があり、通年で出回るほうれん草は主に群馬県から供給され、秋から春にかけて市場に出回るほうれん草は千葉県を中心とする関東圏から、夏から秋にかけてのほうれん草は涼しい地域の北海道などから供給されています。
ほうれん草の起源と歴史
ほうれん草は、ヒユ科のアカザ亜科に属し、中央アジアから西アジアにかけて原産とされていますが、野生の種はまだ見つかっていないため、詳細は不明です。
日本にほうれん草が伝わったのは江戸時代初期で、東洋種が導入されました。
伊達政宗がほうれん草を食べたという記録が残っていますが、その料理の詳細は分かっていません。
ただし、江戸時代の浮世草子作家である井原西鶴の「好色一代男」には、「ほうれんそうの浸し物」という記述があり、伊達政宗が食べたかもしれない「ほうれん草のおひたし」と類似している可能性があります。
北海道にも伝わる
幕末に西洋種が北海道に伝わりましたが、北海道で主に栽培されたため、しばらくはほうれん草と言えば東洋種が一般的でした。
現代では、両者の特徴を組み合わせた交雑種が一般的で、美味しいほうれん草が供給されています。
さらに、北関東地方から東北地方を中心に栽培されている「寒じめちぢみほうれん草」があります。
この品種は、ビニールで覆って育てた後、寒冷な気候にさらすことで、甘さや栄養素(ビタミンなど)が増加する特徴があります。
形状も通常のほうれん草とは異なり、平らで四角い形状をしており、その美味しさは一試しの価値があります。
ほうれん草の品種紹介
現在、栽培されているほうれん草は主に東洋種、西洋種、および交雑種に分類されます。
東洋種
日本で初めて栽培されたほうれん草の品種です。
特徴的なのは、葉に深いギザギザの切れ込みがあり、根元の軸が赤いことです。
肉質は薄く、柔らかく、甘味があります。
しかし、害虫に対する耐性が低く、栽培が難しいため、近年では見かける機会が減少しています。
アクが少なく、食べやすいため、おひたし、鍋料理、和え物などに向いています。
代表的な品種には、万葉、次郎丸ほうれん草、山形赤根ほうれん草、禹城(うじょう)などがあります。
西洋種
欧米で一般的なほうれん草の品種です。
葉は丸くて大きく、肉厚で、根元の軸は緑色です。
東洋種に比べて害虫や病気に強く、栽培が容易ですが、アクが強く土臭い味わいがあるため、家庭での受け入れが難しい側面もあります。
高温で加熱調理するソテーやグリルなどに向いています。
代表的な品種には、ピロフレー、ミンスターランド、ノーベルなどがあります。
交雑種
東洋種と西洋種の交雑により生まれたほうれん草の主要な品種です。
ほとんどの市場に出回っているほうれん草は、この交雑種の一代交配品です。
元々は、東洋種と西洋種が隣り合わせに植えられ、自然に交雑が起こった結果、誕生しました。
サラダほうれん草
交雑種の一つで、生食用に品種改良されたほうれん草です。
主に水耕栽培で生産されており、柔らかい葉と細い茎が特徴です。
アクがほとんどなく、甘みがあります。
代表的な品種には、リード、豊葉、アトラス、ミンスター、サラダほうれん草などがあります。
その他
- 寒じめほうれん草
寒さに耐えるために収穫前に霜にさらす特殊なほうれん草で、糖度が高まり、肉厚で甘味が増す特徴があります。
ソテーやボイルなどの加熱調理に向いています。 - スイスチャード
ほうれん草の一種で、香りが似ていますが、葉野菜としてスイスチャードがあります。
軸の色が鮮やかで、ポリフェノールによる色鮮やかさが特徴です。
味は淡白で、おひたしや和え物、ソテーなどに利用されます。
ほうれん草は何科に属するのかについてのまと
ほうれん草は江戸時代から食卓に登場し、現在でも広く親しまれている食材です。
その調理は非常に簡単で、みそ汁やスープに加えたり、春菊の代わりに鍋に入れたりすることができます。
ただし、過度に加熱しすぎると、色合いと食感が損なわれることがあるため、その点に注意が必要です。
最後までお読みいただきありがとうございました!